「作れば売れていた時代?そんなことがあったのですか?」
まもる主任は驚いたようにハット先生に問いかけていた。
「とにかくたくさん作ってほしいという声が多くあった時代です。」
「…あっ!物不足だったんですか?」
まもる主任はハッとしたように言った。
「そうです。戦後の日本を代表する時代、それはまさに物不足の時代でした。言い換えれば作れば売れた時代です。」
「作れば売れた時代ですか…?」
生産志向→製造志向→消費志向→生活志向
「まず生産志向、これは物不足の時代を背景にする物の売れ方なのですが、物不足の時代にはどのようなことが望まれると思いますか?」
ハット先生の問いかけに一瞬首をかしげながら、まもる主任は答えた。
「物不足の時代ですか…あまり実感できない時代ですが…気持ちとしては、もっと作ってほしい、たくさん作ってほしい…そんな気持ちになりました。」
まもる主任は自信なさげに発言した。
「それに応えるように大量生産が始まりました。大量に作り出すと、ある時はあるけれど、ない時はないのはいやだということになりますよね。」
ハット先生はまもる主任に答えを促した。
「そうなります。できたら一年中作ってほしいです。」
「その気持ちに応えるように始まったのは安定生産です。そしてここまでは作り手側に作りたいものを決める力がありました。先ほど話した「生産志向」です。」
「面白いです。それでは、言われた生産志向に続く製造志向は?」
まもる主任は面白さが止まらない様子だ。
「製造志向から、すこしずつ買う側、消費者の意見が入ってくるのですが、例えば同じ商品でも、旧来のものと新たに機能を加えたものとどちらを選びますか?というように、選択を消費者に委ねるのが製造志向といわれるものでした。」
「それは消費者志向とはちがうのですか?」
まもる主任は首をかしげていた。
「消費者が選択すると言っても、初めに作ったものありきだったので、作り手側が作りたいものを作り、その中で消費者が選ぶものでした。そういった意味で、まだまだ消費者の志向が主ではなかったのです。」

挿絵タイトル:生産志向から製造志向
